「丹塗り矢と水銀」

 カミムスビの娘キサカヒヒメは加賀の潜戸で我が子が立派な男神なら失せた矢よ出てこいと言った後、鉄の鏃の矢が出てきてその矢で洞窟を射通した。その他、オオモノヌシが丹塗り矢となってセヤダタラヒメと通じる話、ホノイカヅチが丹塗り矢になってカモワケイカヅチが生まれる話もある。丹塗り矢は赤い色、鉛丹という性質から邪霊を払う意味もある。
 洞窟・溝と女性性、矢と男性性が結びついており、タタラは製鉄と関連し、丹は水銀と関連している。金属が男性・女性の結びつき、生産と結びつけられるのは当然だろう。このように神話は自然と人間の重要な営みの関連性を比喩によって表している。