「夜と黒」

 柳田国男は昔の日本には日が暮れて一日が始まるという民俗もあったといっている。日本では祭りは夜にもおこなわれていて上賀茂神社のみあれや宮中の新嘗祭、伊勢神宮の神嘗祭、鞍馬の火祭り、篝火をたく夜神楽など夜に神を迎えるという信仰も多い。夜は黒であり、生命の根元という考えは道教的でもある。一方神道も多神教であり、道教との関係も多い。アマテラスが岩屋戸に隠って世界が暗くなったなか太陽であるアマテラスを迎えるという心理とも関係していそうである。ギリシャ神話の夕暮れになって飛翔するミネルバの梟(知恵の象徴)ではないがこのように日本の神は夕暮れになって来臨する。夕暮れに西洋では自己が出現し、日本では神が出現するのはとても興味深い。