「多重人格」

 日本人はもともと自分の子供の前ではお父さんになり、学校では先生になったり、小さい子供の前ではおじさんになったり多重人格的なところがある。神話の世界でもヤマトタケルは日本征討の前は荒々しい無法者で暴れん坊であったが、西征の時には狡猾で東征のときにはお人好し的なところがある。スサノヲ自身も小さな頃は駄々っ子で、高天原で暴れているときには無法者で、ヤマタノオロチ退治のときには正義漢であり、黄泉の国では主である。このように有名な神々は多重人格的である。さらに極めつけはオオクニヌシであり、大国主、大物主、おおなむち、おおなもち、大穴持ち、葦原色許男、八千矛神、大国玉神、宇都志国玉神のようにめまぐるしいほどの名前があり、微妙に性質も違っていてまさに多重人格的と言える。このことがあまり違和感なく受け入れられて来ているのも日本神話、日本人の精神構造の特徴であろう。