「星、月、夜、闇」

 日本神話では星の話が少なくて星の神はカガセオと呼び捨てにされている。夜の食す国を支配する月読みの命自身の存在感も薄い。古事記・日本書紀の編集された直前の天武・持統期は道教、陰陽道、天文道などが非常に盛んで神話に星の話が少ないのは謎らしい。心理的には日本人は臭い物にふたをする傾向があり、死後の世界も神話ではあまり描かれていない。同様に夜の世界も日本人にとってはふたをしてしまう傾向があったと思われる。すなわち日本神話の筆頭神はアマテラスであり、太陽であり、お天道様といって日本人に崇められ続けてきており、闇・夜・月・星は負の対立概念を持ちやすくふたをしやすいのだろう。
 日本の古代首都の大和は山に囲まれていて星を見なくても方角がわかり、星も重要視されなかった可能性もある。
 このようなマイナス面を意識しにくい日本人の心理的構造は事なかれ主義を生み出し、無責任になりがちであろう。多くの場合、自分のマイナス面をみることが一層自分を落ち込ませる。しかし本当はマイナス面と向かうことが自分を深くさせるのだが、傷を深くさせずに自分のよくない部分を知ろうとするには相当の心の準備が必要である。