「八坂瓊の勾玉」

 昔、丹波の桑田村にミカソという人と足往という犬がいて、この犬がムジナという獣を喰い殺したところ、その腹のなかから八坂瓊の勾玉が出てきて石の上神宮に納められたという伝承がある。三種の神器の剣がヤマタノオロチのなかから出現し、勾玉がムジナのなかから出現しているのは、神聖なものは霊的な動物のなかから出現するということである。石の上神宮は物部氏が管理しており、奇しきものを管理してきたのが物部ということになる。物部のモノは奇しきという意味ももっており、物の怪・物悲しい・物寂しい・物忌み・物々しい・オオモノヌシなどで使われているモノである。このように神聖と奇とモノが結びついており、日常的な通常の世界とは違った世界・精神は神聖・奇・モノと関係し、逆説的にこれらの言葉自身が日常的なものになっている。
 精神症状もある意味物凄い体験であったりするが、意味深い体験でもあろう。