「妄想性人格障害」

 妄想の定義は周りが訂正出来ない誤った確信・信念である。その人の確信していることを訂正出来るなら妄想といえないので、妄想には説得は逆効果である。このような固定した妄想を持つ妄想性障害とは違って、妄想性人格障害は固定した妄想が欠けていて妄想様観念を持っている。幻覚や思考障害を持つ妄想型統合失調症と違って幻覚や思考障害はない。さらに他人と複雑な込み入った関係になる境界性人格障害、反社会的行動の長い病歴のある反社会性人格障害、引きこもり孤立する統合失調症質人格障害とは区別される。この型の人格障害は人間に対する不信により特徴づけられ、敵対的攻撃的である。偏屈者、嫉妬深い配偶者、訴訟好きな変人はこの型の人格障害である。人格障害故に治療を求めることは少ないが、家族や雇用者によって連れて来られることがある。

以上のようにこの型の人格障害は被害的であり、人を信用できず、自分のことを人に言えない。恨みを抱き続け、ささいなことに攻撃的になり、配偶者の不貞を疑いやすい。患者は自分の感情を外に向け、他人からのものと感じる。つまり自分自身受け入れられない衝動や考えを他人のせいにする。患者自らは合理的客観的であることを誇るが、暖かみにかけ能力や階級に心酔する。弱者・病人・障害者に軽蔑をしめす。

治療は主として精神療法である。治療者が非難されるなら言い訳せず真実を言ったり謝罪した方がいい。妄想的批判に対して患者に恥をかかせることなく穏やかに現実的に処理されなければならない。患者が望まない限り必要以上の制御や脅威はさけるべきである。