歎異抄

 親鸞の言葉に「善人なおもて往生を遂ぐ。いわんや悪人をや。」という言葉がある。この言葉の意味は精神科臨床経験からこう捉えるのがいいのではないかと思う。悪人というと誤解が生じるが色々精神障害で悩んでいる人ととってもよいだろう。すなわち人はうまれてこのかたもし自分で種々の条件を設定できたり、状況を選べたらみなさん元気で病気にはならないだろう。元気に働き、非常に厳しい仕事、つらい仕事ができるのは相当元気であり、意欲もあり、条件が良いからであろう。したがって結構恵まれている。しかし病気になったり、仕事ができなかったり、頑張れなかったりするのは本当に相当苦しいことなのである。条件が良ければ元気で仕事が出来、頑張ってさらに人から認められて、またやる気がでてくるという好循環が生まれる。元気を出せないのはけっして批判されることではなく、元気をだすのではなく、元気がでてくる工夫をし、元気が出るのを待たなければならない。病気や仕事ができなかったり、閉じこもったりしているのは決して楽しているのではない。まさになんらか条件が悪いのであり、悪かったのであろう。条件の悪い病気・障がい・閉じこもりなどのひとこそ救われる必要があるのであろう。