幻 覚

 人は幼児期のことを思い出すときにはありありと頭に映像が浮かぶことも多い。自分の心にあるイメージはまさに映像的に刻まれていることも多い。あるいは日中意識が外界と遮断されて種々の体験が映像のように生じてその体験に没頭する白昼夢もおこる。このように幻視に近い体験は誰にでも起こりうる。しかしその映像が独立性を帯び、自分が浮かべているのではなく勝手に浮かんでくるとなるとまさに幻視に近くなる。幻視や幻覚が自分の主体性から離れているのは、やはり人間・社会から与えられているストレスや不快な出来事が多く自分以外のもののせいと感じやすいからであろう。幻覚の病理からも分かるように精神疾患で重要なことは人間関係の不信感をどう小さくするかであろう。