調子の波

 人間生きているということは運動・変化していることである。ときどき血圧、脈拍、体温、検査結果、症状の変化が大きくて心配しすぎる人がいるが、ときにはこれらがやや大きくなったり小さくなったりするのは当たり前であり、狭い正常範囲で有り続けるとは限らない。しかるに数値が正常範囲を越えたといって心配しすぎる人がいるがそのことが精神科的には強迫症状と言えることもある。
 生活していくなかでも活力に波があり、元気の良いとき悪いときがあって当然だが、結構多くの人がいつも元気でなければならないと思っている。調子の悪い時期が運悪くしばらく続いたりする。そんなときいつも元気でなければならないと思っていると無理が来やすい。調子が悪いにも拘わらず元気を出して無理をしてうつ状態が出現することが結構ある。
 またうつ状態が良くなってくるときにも波があり、ちょっと調子がよければもう元気がでたと思いすぎて元気良く振る舞うひとが結構多い。やはり元気であり続けなければと思いすぎている。ちょっと調子がよくなれば元気を出して心身のエネルギーを使ってしまい浪費しているといえる。多くの人は動けたら全部活動に回したいと思っているようだが、これは全く逆で元気があっても活動を抑えることが大事なのである。活動せず余ったエネルギーは消え去るのではなくその分自分の心身の状態をよりよく、より元気にする方にまわるのである。
 調子が悪くなっているときにも悪くならないようとしすぎたり、活動しつづけようとして一層悪化させることも多い。元気がなくなったときには元気なく過ごすことも大事だし、元気なときもぼうっとすることができたほうがよいことも多い。