「病気を治す」

 たいていの患者さんは病気を治す、病気が治るということは症状がなくなってすっきりすることだと錯覚している。人はみな今まで生きてきて色々な困難、苦痛、不安、負担、不快などを抱えてやってきたはずである。すなわち苦痛や不快感を抱えて日常生活をどうにか送っている内に苦痛や不快感が和らいできたことを経験しているはずである。病気もすっかり症状が取れてからにこだわるとなかなか治らない。症状を持ちながら日常生活が送れるようになったらある意味治ったといえるのである。病気でない人もある意味いろいろ辛いことを抱えながらやっているわけだから、病気を抱えながら日常生活を送るという考えも大事だろう。ただし病気や辛いことを抱えるということは無理をして元気に振る舞うこととは違う。自分の状態を知り、病気を知り、体調に合わせて生活することが大事である。病気を治すとは病気と付き合いながら日常生活を送るということでもあろう。