生きることと死ぬこと

 生きることも死ぬことも自然なことである。人は自分の意志で生まれたのでなく生まれてくる。また自分の気持ちに反して死んでしまう。自分の意思とは無関係に生まれて生きることと違って死ぬことについては一見自分の意志で死ぬことが可能なように見える。しかし自殺は不自然である。もし生活に大きな苦しみがなければ人はみな生きて行きたいと思う。自分の意志で病気の苦しみや経済問題、家族関係、人間関係、仕事などの苦しみをわざと求める人はいないだろう。したがって一見自分の意志で死ねるかのように見えても苦しみは与えられており、その結果死ぬことは自分の意志とは言えないだろう。
 それでは死ぬのは運命であり自然かというとそういう側面と、生まれて生きるのが自然であり生きているうちは生き生き生きるのが自然という一面もある。病気、苦しみ、死は生きることに対し不自然にも与えられる。生きているうちは生き生き生きて、苦しみを持ちながらも死ぬまで自分の意思で生き、その結果の死を自然に任せるのが良い。病老苦は生き生き生きることに対し不自然な故に人は自分の意志で病老死と闘いどうにか生きようとする。生きようとするこのような意志は自然には反していないと考える。