「苦しい症状をなくそうとすれば余計に苦しむ」

 精神科・心療内科の疾患は他の病気と同様、本人が望んで引き起こしたわけがない。本人の悩んでいる症状をターゲットにして治療できる内科・外科に比べて、精神疾患は患者さん自身がそれをターゲットにして治そうとすればするほど、注目がその症状に集まって一層症状が強くなる傾向がある(心身交互作用)。精神は自由自在に大きくなったり、小さくなったり出来るため例えば心臓の動悸に注目すればするほど、心臓の動悸が強くなる。精神が心臓や動悸への関心だけによって占められるため、余計症状が強くなる。従って逆説的だが症状を軽くするためには治したい症状を苦しくても持ちこたえながら、注目を症状からそらすために出来るだけ楽しいこと、安心できること、落ち着けること、軽い運動、趣味などの気分転換や楽しみなどをもつことが大事である。逆にこだわればこだわるほど症状の袋小路からでれなくなるのは強迫症状などの精神病理からもよく理解できる。