「コムプレックスという言葉は劣等感を指すとは限らない。」

 普通の人はコムプレックスというと劣等感のことだと思うが、本当の意味はそれだけをさしているのではなく、複合観念一般をさす。それは幼児期の人間関係に根ざした複雑な感情、情緒、観念である。
 例えばある子供に弟や妹が生まれると、両親の愛情・関心のかなりの部分が下の子供に行き本人は両親に嫉妬、下の兄弟に妬みなどの感情が起こる。本人のその感情に両親が気付いている場合、気付かない場合、無視した場合、我慢させた場合、代償に物を与えた場合、それなりに気遣った場合などなど、この時の心理状態は後の人間関係・3者関係の時の本人の複雑な感情、態度と大いに関係してくる。
 母親を独占したいのに邪魔な父親がいる時にその母親との関係、父親との関係すなわちエディプスコンプレックスなども有名である。
 その他兄弟間の妬み、争いを含むカインコプレックスもある。人の感情はこのように幼児期からの家族毎の複雑な人間関係に基づいている。