「何故この子だけが?」

 母親はこころの病気になった子供について他の子供と差別しないで育ててきたのにどうしてこの子だけが病気になったんでしょうかとよく尋ねる。しかし同じように育ててきたということには大きな問題が潜んでいる。すなわち同じように育ててきたつもりでも同じに育てたわけではない。さらにこの言葉には母親だけが子育てに責任を負っているような自責の念も入っていそうである。母親は基本的には子供を愛していてよかれと思ってやっていることが多く、子供の体質の違いや父親などの他の家族の役割、さらに近隣、学校などでの人間関係における子供への大きな影響を母親自身が充分コントロール出来ていなければならないと思いがちである。しかしそれほど母親が全責任を背負わなければならないかというとそうではないだろう。例えば夫婦仲が悪ければそのことだけで子供への余裕がなくなり、それを一方的に母親のせいににすることは間違いだろう。また自責の念が強くなって母親が全責任を感じて元気をなくすこと自信が子供の回復を遅らせるだろう。
 しかしだからといって完璧な人間はありえず、母親は母親で父親は父親で本人は本人でどんどん自分を変えて生き生きさせる必要はある。各自自分を変えるためには閉じこもらずに人や社会に開かれて本人だけでなくみんなが変わることによって本人も変わっていけるだろう。ただしいくら開かれていることすなわち人間関係が大事といっても無理して参ってしまっては意味がないのだから生き生きや元気をなくさないことを基準にさらに単に今だけでなく長く生き生きすることを基準にしなければならない。