脳男

 愛宕医療センターに勤める精神科医・鷺谷真梨子(松雪泰子)が出勤途中、子供たちも乗せたバスが目の前で爆破される。最近連続爆破事件のコメントをした女子アナやコメンテーターが舌を切られて殺されたり、連続爆破されたりしていた。どこにでもある遺留品のなかから針金が特殊な刃物で切断されたことがわかり、犯人の爆弾製造工場に辿りついたが、刑事の茶屋(江口洋介)と広野(大和田健介)が工場に踏み込もうとした途端爆発がおこり、そのなかでたくさんの金属片がささった状態でつっ立っていた男・鈴木一郎(生田斗真)が犯人として逮捕される。事件や自分のことは一切話さず精神鑑定にかけられる。爆発で目の前の子供たちが亡くなったのを見た精神科医・鷺谷の鑑定なら責任能力があると判断すると考えた茶屋たちは鷺谷に鑑定を依頼する。鑑定の結果鈴木は痛みを感じない体の持ち主で、さらに感情もない人間であることがわかる。もしそうなら彼を教育した人間がいるはずである。鷺谷は精神科の古い論文にあたり鈴木一郎らしき人物を担当していた精神科医・藍澤(石橋蓮司)をたずねる。藍澤によると子供の名前は入陶大威(いりすたけきみ)で、子供のころ両親が交通事故で死に大富豪の祖父入陶倫行(夏八木勲)が彼をひきとる。感情や痛みがないが、記憶力が写真のように一度見るだけですべて暗記できる特殊能力があった。藍澤は彼を脳男と名付ける。祖父は大威を徹底的に英才教育をし、身体も鍛えさせ、この世の悪を殲滅するようたたき込んだ。鈴木一郎は鷺谷による鑑定中に、鷺谷が担当していて更生中の志村(染谷将太)に出会って何か犯罪を感じ取った。鷺谷は彼に弟を殺されそれを乗り越えるためあえて担当し更生させたことに自信を持っていた。
 鑑定が終わり、茶屋は正義感あふれる殺人ロボットしてあらわれた大威こと鈴木一郎を本庁へ護送する。鈴木に狙われた真犯人は異常な人格の緑川紀子(二階堂ふみ)と水沢ゆりあ(大田茉菜)の二人で緑川は両親を始め多くの人間を殺してきた殺人鬼だが両親の財産をうけつぎ頭脳も明晰であった。また水沢は目立ちたがり屋の典型的不良であった。しかし緑川は癌にかかっており余命幾ばくも無いなか自暴自棄になっていた。鈴木に自分と同類な部分を嗅ぎ取った緑川は鷺谷が鑑定しているときから鈴木を盗聴マイクなどで追跡していた。そして護送中に鈴木を殺しにかかるが失敗に終わり水沢が死ぬ。
 爆弾をたくさん製造していた緑川は愛宕医療センターを連続的に爆破させ鷺谷らを人質にとり鈴木を呼び寄せた。結局凄絶な闘いの中鈴木が生き残り、緑川が死んでいく。そのなかで鷺谷の殺してはいけない一言で緑川を殺すのをやめた鈴木は心の中に人間性が残っていたのかもしれない。
 鈴木は助かり再び犯罪者を殺す役割を始めたが、鷺谷が更生させたと思っていた志村を鈴木一郎は殺す。志村が再び子供を殺そうとしていたのである。鷺谷はどうして志村が再犯すると分かったのかを訪ねると鈴木か志村の腕に子供にかまれた跡が見えたと答えた。一瞬のうちに種々の場面がみえる特殊能力によるものであった。今後、脳男はどういう人生を送るのだろうか?
 確かに精神科医療で感情のない情性欠如人格が報告されている。また痛みの感じない中枢神経障害者も報告されている。痛みがないといいと思うだろうが、大怪我しても気付かないため早死にしてしまう可能性が高い。感情がない場合この社会でやりたいことしたいことがないため生きていく意欲も落ちるだろう。