一命

  江戸代初期お家取りつぶしの多かったころ、真冬に井伊家門前に一浪人津雲半四郎(市川海老蔵)が武士としての死に場所に当家の玄関先を借りたいとやってくる。井伊家江戸家老斉藤勘解由(役所広司)はまたかと言って客間に通す。昨年秋にも一人の若い浪人が士官先もなく、食いつめて、どこかで狂言切腹をすれば少し金がはいると聞いて当家にやってきたところ、当家で切腹に至った話をする。刀は竹光で切腹にあたって猶予を願いたてたので武士の風上にも置けないと思ってかなり無理矢理に竹光で切腹させたという話をした。しかし津雲はそれでも切腹したいと言い張り切腹させざるをえなくなる。そして自分の介錯に尺潟彦九郎(青木崇高)松崎隼人正(新井浩文)川辺右馬助(波岡一喜)などを頼むが誰も出仕していなかった。怪しんだ斉藤は津雲を切るよう命令しようとするが、津雲は少し話したき儀がござるといって話を聞いてもらう。実は先般切腹した浪人は津雲の婿千々岩求女(瑛太)で彼の父親と津雲は芸州広島福島家の同僚であった。其の父親は城普請の責任者だったが幕府に勝手普請と責任を追及されお家お取りつぶしが決まったころ他界した。その息子求女を託され、妻に先立たれた津雲は娘美穂(満島光)とともに浪人の身分で士官を探し内職をしながら子供二人を育て上げる。やがて求女と美穂二人は結婚し子供も生まれるが美穂は病弱のため労咳になる。さらに子供が高熱を出し金策せざるを得なくなった求女が狂言切腹を企てた。武士の面子が大事ということで求女を死に追いやった尺潟たちの髷をきったため3人は出仕出来ないのだろう。さあ武士の面子はどうするのだろう?と話し終える。斉藤は津雲を切れと命令するが津雲は斉藤家の家来たちと斬りあって死ぬ。後に髷を切られた3人は切腹させられる。津雲が斬りあった時に、井伊の殿様から預かった鎧兜をこわしてしまうが斉藤はそれを殿には話さず修理したことにする。武士の面子といいながら斉藤はどうなのだろう。