ツリーオブライフ

 映画の始まりは神秘的映像を、日常的にあるがあまり注意されない出来事を時間をかけて映していく。オブライエン夫婦(ブラッド・ピット、ジェシカ・チャスティン)の生活が映し出され、その家庭に訃報が届く。次男R.L.がわずか19歳で亡くなったのである。
 それから数十年後、長男のジャック(ショーン・ペン)は仕事に成功しているが夫婦関係は冷え切っていた。ジャックはしばし過去の出来ごとに飛んでいく。
 1950年代、テキサス州田舎町でジャックが生まれ、両親はそれを喜ぶ。出産はありふれた出来事だが、神秘的なことでもある。ジャック一家は田舎の自然に包まれて、幸せな生活を送り始め、ジャックには弟二人が出来る。時に父は厳しく、人との生存競争に打ち勝つべく強い精神力を子供たちに要求する。父は音楽家になれずに田舎町での仕事に打ち込んできたが子供たちには負け犬になってほしくなかったのである。一方母は慈愛に満ちて神の恩寵のもとで生きていくだけで幸せと考えていた。そんな父にジャックは反抗しどうしても許せない部分が芽生えてくる。近所や学校などで不良行為なども起こす。こうして夫婦は考え方の違い、子供への関わり方の違いでよくぶつかってしまう。
 父親の会社の経営が傾き一家は転勤を余儀なくされ、父親の苦しい一面などもみることによってジャックは成長していく。弟が死んだときも父との確執が消えてはいなかった。しかしこうして自分が年をとって行くに従って小さいときの家族との体験が自分を形作ってきたんだという思いにジャックは深く浸り、映画では小さい頃の家族が荒野のような背景のもとで、ジャックの前に出現する。
 生きる、家族、自然の深い結びつきを語っている映画だろう。