ブラック・スワン

 ニューヨーク・シティ・バレエ団の新シーズンのオープニング演目が白鳥の湖に決まり、長年プリマを務めてきたバレリーナ・ベス(ウィノナ・ライダー)を引退させることに決めた芸術監督ルロワ(ヴァンサン・カッセル)は新プリマを決めるオーディションを実施する。母親と二人長年バレーに取り組んできたニナ・セイヤーズ(ナタリー・ポートマン)は気持ちが高ぶり続ける。オーディションで可憐な白鳥は演じえても、邪悪な黒鳥はニナの性格上非常に難しく、新入りのリリー(ミラ・クニス)の能力にも気を取られニナの出来はもう一つであった。
 女王役を諦めきれないニナはベスの口紅を盗んで自分に塗り、ルロワにアピールしに行くがルロワはニナに厳しかった。しかし配役の発表はニナがプリマを務めることになった。
 もともと、幼児期からのあまりの練習の厳しさでニナは自分の知らないうちに自分の背中を爪で自傷する症状をもっていた。プリマに選ばれたことで緊張は絶頂に達する。官能的なリリーを意識しながら自分を脅かす幻覚体験を持つようになる。リリーはニナをうらまやしくもあるが、緊張しているニナの心を解放しようとして夜の歓楽街に連れ出す。その夜はリリーとの同性愛的体験も含め自己を解き放つ。しかしそのため翌日の練習に遅れたニナはリリーにどうして起こしてくれなかったのか聞くとリリーはニナにあなたの家には行っていないと断言する。ニナは現実と幻覚が相当混乱するようになってきていた。
 白鳥の湖の公開日には最初踊りに失敗したニナはリリーに自分の役を奪われると思い、リリーともめてガラスの破片でリリーを殺してしまう。緊張が絶頂に達し非情になったニナは完ぺきな黒鳥をおどり大成功する。しかし殺したと思っていたリリーは生きており、ガラスで傷をつけていたのは自分自身に対してであった。クライマックスにてニナは出血多量で意識がなくなるのであった。
 ニナの精神的問題は自分のしたことを覚えていない解離症状、自分自身を傷つける自傷行為、それに幻覚などの精神病症状があり精神疾患の極めて今日的状況をリアルに表わせていると思われる。