「沈まぬ太陽」

 昭和30年代、恩地元(渡辺謙)は国民航空の組合委員長として労働者の待遇改善のために副委員長行天四郎(三浦友和)らとともに会社側と闘ってある程度の成果を得ていた。しかし会社側の切り崩しで行天は会社側に有利な弟2組合の成立に協力する。一方信念の強い恩地は会社側に報復人事と言ってよい未開発地域への赴任を命じられる。恩地は社長松山(神山繁)に2年で日本に戻すと約束して貰ったが社長の立場は弱くなって、パキスタン、イラン、ケニアと日本へ戻れない人事異動を受け続ける。その間母親(草笛光子)は死んで、子供達はいじめられ、妻(鈴木京香)はひとりで家庭を守ってきた。
 恩地が苦しんできた間に会社は国民航空プロパーの堂本信介(柴俊夫)とその片腕の八馬忠次(西村雅彦)の二人に支配されるようになる。9年目にしてやっと日本に復帰できた恩地は元組合書記長八木和夫(香川照之)たち元仲間の苦境を知ることになる。一方行天は会社側立場にたちエリートコースを歩んでいた。ある日国民航空は御巣鷹山で500人もの命を奪う飛行機事故を起こす。恩地は先頭にたって犠牲者の家族交渉を続ける。それに対し行天は家族対策を会社側の有利なように押し進める。国民の批判のために社長の堂本は辞めざるを得なくなり日本の首相利根川泰司(加藤剛)は元関西紡績会長の国見正之(石坂浩二)に社長を頼む。国見は信用を失墜した会社を立て直すために恩地に組合をまとめるよう頼む。国見の熱意に動かされた恩地は新しくつくられた会長室部長という立場で会社に貢献することになった。
 そんななか政界の争いもからみ国民航空は子会社国航商事会長にまで成り上がった八馬らの裏工作により政治家への賄賂をしていたことがわかる。行天も自己の出世のため八木をつかって航空券を裏で売りさばき政治家竹丸欽次郎(小林念持)に手渡していた。国見の改革は八馬や行天の悪事をあぶり出す一方、政界の圧力により会長職をやめざるを得なくなる。行天は自分の恋人三井美樹(松雪泰子)をつかって恩地に探りをいれさせたりし、自分の立場を守ろうとした。しかし八木は悪事をすることが耐えられなくなり、死ぬのと引換えに検察に自分や行天がしてきた悪事をばらすのである。信念の男恩地の生き方はあまりにも堅すぎて周りを苦しませるがそんな人がかえって会社を守るのであろう。