「火天の城」

 織田信長(椎名桔平)は安土に今までにない5層の城を築こうとする。城造りを任せたのは熱田の番匠岡部又右衛門(西田敏行)であった。又右衛門は信長の吹き抜けを作れという要求にうんとは言えなかった。信長は自分の要求に応えない者は殺してしまう性格であった。又右衛門には任せきれないと思った信長は東大寺大仏殿を建立した中井一門と金閣寺を建立した池上五郎右衛門の3者の指図争いにする。又右衛門は自分の信念で吹き抜けのない五層のモデルを作り上げる。いよいよ指図を決める場面になり織田信長の言うことを聞かず吹き抜けを作らなかった又右衛門は自分の命をかけて3者のモデルに火をかけることを頼む。火をかけることを許された結果吹き抜けのない又右衛門のモデルだけがなかなか燃えなかった。
 信長に安土城建設を任され安土城を三年で作るように命じられた又右衛門はこの仕事に命をかける。この大きな城を建てるのに木曽の大木が必要と思った又右衛門は信長の許しを請うて敵方武田の領地である木曽に乗り込んだ。木曽檜の匠大庄屋甚兵衛(緒方直人)は又右衛門の気概に惚れ込み大雨の日に檜を渡すという命を懸けた約束をする。雨が降らず檜が届かないなか、安土に連れてきた部下たちが信長の戦争に借り出され、又右衛門の娘凛(福田沙紀)が愛していた市造(石田卓也)が帰らなかったり、又右衛門の妻田鶴(大竹しのぶ)が夫の仕事を支え続けるなか死んでしまったり、艱難辛苦のなか又右衛門が耐え続け、約束の大雨が降った日には檜が確かに安土に届くのである。甚兵衛は武田方の武将木曽義昌(笹野高史)に木曽檜を渡したことを感づかれ殺されてしまう。
 多くの犠牲のなか安土城が完成間近に檜の大黒柱の周りの柱の根元が地盤沈下して木曽檜の大黒柱の荷重が限界を超えているのを知った又右衛門は部下や部下の家族達総出で檜を4寸切ることを決める。又右衛門は不可能なことを可能にする男だと盟友の石工頭戸波清兵衛(夏八木勲)は応援する。こうしてみんなの力でやっとのこと安土城は完成するのである。
 ひとつの大城を完成するには多くの人の汗と涙と命が懸かっていたことは忘れてはならないだろう。しかしその安土城も本能寺の変後炎上するのである。盛者必衰の理を表している。