「グラン トリノ」

 ウオルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)は頑固で偏屈で自分なりの正義感があり、時代遅れだが時代に流されない教養の低い男である。自分の妻の葬儀に来た息子達家族がただ義務だけで参列し、孫娘のファッションが気に入らず、大勢の参列者をただハムを食いに来ただけと言ってのける。新米のヤノヴィッチ神父(クリストファー・カーリー)には頭でっかちの童貞と毒付く。ヤノビッチ神父は亡き奥さんからウオルトが懺悔を受けるよう説得することを頼まれていた。息子達はそんな父親が煙たくて葬式がすむとすぐにそれぞれの家に帰って行った。
 ウオルトの近所にはアジア系の住民が住んでおりアジア系の住人が家の手入れもせずにいるのを苦々しく思っていた。さらに町はアジア系の不良と黒人の不良グループが争っていて非常に物騒であった。ウオルトはきっちりしていて家の手入れが行き届き、自分の宝であるヴィンテージ・カーのグラン・トリノを磨き上げることを楽しみにしていた。ウオルトは自動車工だったのでみずからステアリング・コラムなどを取り付け、いつでも動かせる状態であった。そんなウオルトのグラン・トリノを隣のモン族の若者タオ・ロー(ビー・バン)が従兄弟のスパイダー達に強制されてその車を盗もうとするところをウオルトはライフルで追っ払う。スパイダー達のグループに入らずにすんだタオはウオルトの言いつけ通りにする罰を与えられる。ウオルトは近所の家・屋根・庭などの修理を命ずる。父親のいないタオはウオルトの生き方が参考になる。タオの姉スー(アーニー・ハー)が黒人にからまれていたのを助けたことをきっかけにスーはウオルトをモン族のパーティーに呼んで感謝の気持ちを表す。ウオルトは最初は不承不承であったが、徐々に一人でいるより充実感を感じるようになっていた。又タオを一人前の男にすることにも生きがいを感じ始めていた頃、スパイダー達がタオを仲間にしようと画策していたが、ウオルトがスパイダー達を撃退した。しかしスパイダー達はそれで大人しくなるはずはなく、ハニーをなぶりものにして、タオやウオルトの家に銃弾を打ち込んだのである。タオは銃をもって敵討ちに行こうとするがそれを力ずくで止めた。ウオルトは考える所があり、教会に行ってヤノヴィッチ神父に懺悔をし、ヤノヴィッチ神父もウオルトが敵討ちに行くことを認める。自分一人でスパイダー達のアジトに近づきあたかも胸から銃をだすかのようにライターをだしたのでスパイダー達に銃で滅多打ちにされて死んだ。ウオルトはスパイダー達が丸腰のウオルトを殺したら刑が非常に重くなるのを計算していたのである。
 たまたま知り合った人間に絆や信頼関係ができると人間は自分の命まで投げ出すという人の心のあり方が人を感動させる。