「椿三十郎」

  ある夜上役の不正を暴こうとして井坂伊織(松山ケンイチ)ら若侍9人が杜の古びた社殿に集まっていた。汚職の張本人次席家老黒藤(小林稔持)と国許用人竹林(風間杜夫)の粛正のため井坂の伯父で城代家老の睦田(藤田まこと)に意見書を手渡したが受け入れて貰えず、大目付菊井(西岡徳馬)に訴えたら仲間を集めろと言われた。その時奥で寝ていたよれよれの紋付き袴姿の浪人(織田祐二)が大目付の菊井が怪しいといってみんなを驚かせた。浪人に話を聞かれたと思った若侍たちがその浪人と斬り合いになろうとしたときに、浪人はここも取り囲まれているかもしれないと言った。その話をするやいなや大目付の手下達に取り囲まれていて浪人は若侍達を床下に隠し、大目付の手下たちと斬り合いをして敵方の使い手室戸半兵衛(豊川悦司)にこの浪人とこれ以上斬り合いをしても無駄だと思わせ退散させる。室戸は腕のよい浪人に一目を置き困ったらいつでも大目付の所に来いと言って別れる。
 今度は睦田が危ないと思った若侍たちは決死の覚悟で睦田邸に行こうとするのをこの浪人は放っておけず加勢することになる。すでに睦田は菊井達に捕らえられていて汚職の張本人にされようとしていた。若侍と浪人達は人質になっていた睦田の妻(中村玉緒)と娘千鳥(鈴木杏)を救いだし同志の一人寺田(林剛史)の家に捕らえた敵方一人と隠れる。そこは椿で一杯の次席家老黒藤のとなりであった。そこで睦田の妻に名前を聞かれた浪人は椿三十郎と答える。若侍たちは必死で睦田の居所を調べるが見つからず、睦田の居所を調べるため椿は自分を売り込みに大目付菊井の所に行くと言って出かけた。若侍達はそれでも椿を信用できず4人が後をつけるが室戸に捕まってしまう。椿は策略を使って菊井の手下をすべて殺してつかまった若侍達を救い、自分を縛らせる。その後やって来た室戸は釈然としないまま縛られた椿を解放した。若侍達が椿を疑ってしまって逡としているなか井坂が睦田に渡した意見書の断片が椿屋敷と言われている黒藤邸から小川を通して流れて来た。これで睦田の居所がとなりの黒藤邸とわかった。少人数で睦田を取り戻すため、椿が一計を案じて自分が町外れのお寺のお堂の二階で寝ていたら粛正派の若侍達たちが大勢集まってきたと黒藤邸に言いに行って、室戸と菊井の大半の手下をお寺に向かわせることに成功した。その間に合図の椿の花をたくさん流そうとしたが、竹林にお寺には2階建てのお堂がないと気付かれ椿は捕まる。黒藤と竹林をだまして踏み込み中止の合図である赤い椿をたくさん小川に流さないと粛正派が大勢乗り込んでくると言われた2人は必死に赤い椿を小川に流し、逆に若侍達に襲撃させ見事睦田を奪還する。
 汚職派3人は捕まり、復権した睦田は椿をはさんでお祝いしようとしたが椿はなにも言わずに去っていく。若侍達は椿を追いかけたところ、そこに室戸がやってきて自分の野望をたたれたことに加えてどちらが強いか腕比べをしよとして真剣勝負になり、最後に椿が勝つ。
 勧善懲悪、先輩の知恵、見かけと中身の違い、人を斬り殺すこと、信用、型にはまらない旅人、トップ思考などのテーマを持った娯楽映画だが、悪人側についた大勢の手下はやはり悪人なのであろうか?