「怪談」

 ある雪の夜、深見新左衛門(榎木孝明)は借金取りに訪れた皆川宗悦を切り捨て、死体を累カ淵に捨てる。その後宗悦に祟られたのか新左衛門は錯乱して妻を斬殺し、深見家はお取り潰しとなる。一人息子は使用人の勘蔵に引き取られる。宗悦の2人の娘・豊志賀(黒木瞳)とお園(木村多江)は父をいつまでも待ち続ける。
 25年後今はたばこ売りになっている深見の息子新吉(尾上菊之助)と富本の師匠になっている宗悦の娘豊志賀はとある街角で出会う。何か引き寄せられた豊志賀は新吉に声をかけたばこを買う。これをきっかけに新吉もかなり年上の豊志賀にひかれ、雪のある夜2人は結ばれる。新吉と付き合って豊志賀は嫉妬深くなり、弟子達は次々と辞め、妹多江に新吉との付き合いを辞めるよういわれるが豊志賀は受け付けない。新吉はこのままではいけないと思って別れ話を持ち出すが豊志賀はすがりつき、言い争っているうちに三味線の撥が豊志賀の左顔面上部を傷つける。その傷は酷く腫れ上がり豊志賀の形相は一変し、一生懸命看病する新吉だが、隅田川の花火の夜、豊志賀の薬を買いに出た新吉は豊志賀の弟子お久(井上真央)と出会い、新吉に気のあるお久は継母のいじめに耐えかねて上総の叔父を頼って帰る予定だと言い、新吉は豊志賀を棄てて、お久と一緒に行く決心をする。豊志賀は新吉と結ばれる女房はとり殺すと書き残して一人で死ぬ。その怨念は早速現れ、新吉が立ち寄った勘蔵の家に既になくなっている不気味な豊志賀が現れて2人に会い、2人はその豊志賀を休ませ駕篭に乗せたところで、勘蔵宅に豊志賀が亡くなったという連絡がはいり駕篭をみるともぬけの殻だったので一同恐怖におののく。
 新吉とお久は豊志賀の墓前で再会し、今度こそ下総に行こうとする。2人が下総に向かう雨の夜道でお久は何者かに怯え続け半狂乱になり、新吉が助け起こすとその顔は豊志賀であり、新吉は恐怖のあまり豊志賀を落ちていた草狩り鎌で殺したところ、それはお久であった。何の因果かそこは宗悦がなくなった累カ淵であった。行き倒れの新吉は下総の大店に助けられる。お久の叔父はこの店の主人三蔵(津川雅彦)であった。いたたまれず逃げ出した新吉は故郷の茶屋で働いていた豊志賀の妹お園に声をかけられ、お園の口利きで仕事を始める。新吉の真面目な仕事ぶりのためか行き倒れになったとき新吉の看病をした三蔵の娘お累(麻生久美子)が新吉を愛してしまったことから、三蔵は新吉にお累との結婚を頼む。新吉は死んだ女と縁が切れないと言って断るが、その時お累は囲炉裏の火で顔に火傷する。そんなお累を見捨てられず、新吉はお累と祝言を上げる。その後2人には子供が出来るがその子供が不気味で新吉に豊志賀を思い出させるのであった。家に寄りつけず、酒に溺れていく中新吉にお賤(瀬戸朝香)という女が近づいてくる。お賤は三蔵の女であり、お久殺しの犯人を知っているから100両寄こせと新吉を脅すのである。切羽詰まった新吉は店の金に手を付けお賤に渡すがその現場を見た三蔵は新吉を責め立てて、争っている最中に三蔵はお賤に殺される。下総屋の旦那になった新吉だが仕事もせず酒に溺れ、ある夜家に帰ってきたときに子供が死んでおり、そこにお久の亡霊が現れ夢うつつで累カ淵に引っ張り込まれそうになって必死にこらえてはっと我に返ったときには累の首を絞め殺していた。我を忘れて逃げ出したが、お賤も含む追っ手達が新吉を取り押さえようとして、お賤もふくめて大勢新吉に殺される。疲れ果てた新吉を逃がしてやろうとしたお園だが、累カ淵で新吉を小舟に乗せたところ豊志賀が現れ新吉を累カ淵に沈めてしまう。
 人の怨念が残るという捉え方はまさにそう感じてそう捉えている人に残るのである。この映画は怨念を忘れるなと言いたいのであろう。