「手紙」

 川崎のリサイクル工場で働いている武島直貴(山田孝之)には殺人犯の兄貴がいた。兄貴剛志(玉山鉄二)は弟直貴の学資欲しさに盗みに入った家で人を殺してしまったのである。服役中の兄貴の楽しみは弟直貴の手紙であった。但し直貴は殺人犯の弟ということで世間から白い目で見られ差別され続けてきて精神的にかなり卑屈になっていた。しかし直貴は仕事を真面目にこなしてきたが、その仕事ぶりの直樹を好きになった食堂の配膳係の白石由美子(沢尻エリカ)に話しかけられても暗い目をして無視するのであった。ある日同僚倉田(田中要次)に刑務所からきた兄貴の手紙を見られなじられた直貴は突然興奮し暴れてしまった。しばらくして倉田が直貴のところに誤りにきて、実は彼も刑務所に入っていたことを打ち明け自分のしたいこと・可能性は捨てるなといわれ直貴は奮い立つ。
 じつは直貴には子供の頃からの親友寺尾裕輔(尾上寛之)がいてテラタケというお笑いコンビを組んで練習していた。翌朝直貴は工場を去り、お笑いコンビで身を立てようとする。二人はコンテストなどで評価され、大手芸能プロダクションの目にとまり、テレビにも出ることになりブレイク寸前であった。兄の剛志も心から喜んでいた。しかし直貴はプライベートの合コンではお笑いの先輩と飲んでいても打ち解けることは出来なかった。そんな直貴は大会社の専務の娘中条朝美(吹石一恵)と出会い二人は急に惹かれあう。一方由美子は直貴がアルバイトしているスナックにやってきてあれこれ直貴に関心を持つのであるが直貴の方は関心がわかない。ところがブレイク中の直貴はインターネットで兄貴が殺人犯と書かれ、せっかくプロダクションに後押しされ成功しそうになったのにプロダクションを辞めざるをえなくなる。また朝美の父にも知られて二人の交際は止められてしまう。失意の直貴は兄貴に兄貴のせいで俺の人生は台無しだと考えて、二度と手紙をださないとつげる。
 こんな直貴を影から支え続ける由美子は、直貴が勤め始めたある電気製品の量販店でも差別をうけ配置換えになった直貴のことを会長に訴え、直貴は会長から「君はこの現状から出発しなければならない。差別じゃなく必然なんだ」と言われ逃げないで頑張る決心をする。こうして支え続けてくれた由美子と結婚し娘を産んだが自分の娘への差別とも闘い続けなければならなかった。一方由美子が直貴に内緒で自分の代わりに兄剛志に手紙を書き続けていたのがわかり、兄貴に本当のことを伝える。ある日被害者の家族に弟として哀悼の意をささげにいったら、兄貴はかなり苦しんだ末被害者の家族に手紙を書き続けることは結局は自分を許すためにしていることだ、もう手紙は送らないと言って来たのでもう終わりにしようということで直貴は被害者の家族から許してもらえた。しかし直貴は自分のしたことが結局兄の気持ちを踏みにじりこれではよくないと考えた。そのため以前勧められていた寺尾と一緒に刑務所でお笑いトークをする決心をして、直貴と寺尾は兄貴の前でお笑いをしながら、元気にしている弟をみて兄貴が心から立ち直っていくのを直貴は感じたのである。
 差別され虐げられた人が頑張り続けるなか立ち直っていく姿は人を本当に感動させる。