「ロフト」

 有名な小説の賞をもらった女性作家の春名礼子(中谷美紀)は現在書き始めている恋愛小説がはかどらない。お腹の中から黒い物が吐き出される幻覚をよく感じる。医者にかかっても異常はないらしい。そこで担当編集者の木島(西島秀俊)に頼んで探してもらい、静かな郊外の一軒家を借りてそこで執筆することになる。その家には前の住人のものが残されたままであった。その中には小説の原稿もあった。ある晩となりの建物に一人の男が人間ぐらいの大きさのシーツにくるまれた物を運び込むのを目撃した。礼子はその出来事が気になり調べたら、その建物は相模大学の研究所で、その男は吉岡誠(豊川悦司)という大学教授と分かる。さらに大学の資料を探す内に考古学グループがミドリ沼から1000年前のミイラを見つけたという記事を読む。さらなる情報を求めて教育映画社の村上の元を訪ね、戦前に撮られたミドリ沼のミイラという記録映画をみてその映像に何か不思議な感覚を感じる。そのためとなりの研究所に忍び込みミイラを見る。そのとき礼子は吉岡に忍び込んだ姿を見られてしまう。
 吉岡は大学からミイラの展示を求められていたが何かに取り憑かれたように第6感で大学から研究所にミイラを運んでいたのである。この頃大学の研究生の面倒を研究所で見ることになった吉岡はミイラをみてしまった礼子の元を訪れてミイラを預かってくれと頼む。ミイラに何か引き寄せられている礼子なら預かってくれると吉岡は感じていて、事実礼子はミイラを預かることになった。預かったミイラに取り憑かれたのか、小説が書けなくなりミイラの幻覚を感じ前の住人が残して行った小説を自分が書いたものとして木島に渡すのである。その日から何か新たな存在(安達裕美)の気配に脅かされて沼に導かれそこで気を失ってしまう。丁度吉岡に助けられて、二人はお互い惹かれていくようになる。吉岡からミイラは20歳位の女性で永遠の美のために自ら泥を飲んだ可能性があることを聞かされる。そのとき吉岡は何かに怯えているようであった。
 礼子が家に戻るとそこには木島の姿があり、礼子は木島に非常な不信感を持つ。木島からこの家の前の住人は小説家志望の女子大生であったことを聞かされる。その日はやっとのことで木島を追い返した。後日出版会社のほうに女子大生失踪事件の犯人として警察が木島を捜査しに来たことを聞かされ礼子は不安になる。礼子はミイラと失踪女子大生に操られるかのように女子大生が殺されて埋められた場所やミイラの引き上げられたミドリ沼に不気味な気配を感じる。丁度その頃吉岡から女子大生殺害の真相を聞かされる。この女子大生の借家で木島がその女子大生の首を絞めたのを吉岡が目撃する。木島が女子大生を処分する道具を探しに行ってる間、女子大生が死んでいるのかを吉岡が確かめようとすると女子大生が息を吹き返し、吉岡はその女子大生がミイラの生まれ変わりと感じて取り付かれたように再度殺してしまう。その後その家で吉岡が身を隠していると、木島が帰ってきてその女子大生を森に埋めてしまう。吉岡はその後の記憶を失っていたため吉岡の妄想かどうかを確かめに吉岡と礼子の二人は埋められた場所に死体を確かめにいくが、木島がやはり確かめに来ていて二人は木島に殺されそうになるが丁度警察もやって来て木島を逮捕した。二人は助かったが吉岡は自分がその死体をミドリ沼に沈めたに違いないと思い出す。礼子にはそれが吉岡の妄想に思われたので二人でミドリ沼に行って吉岡の行為が現実であったのかを確かめる。最後にやはり吉岡が死体を沈めていたのがわかり、ショックで吉岡は沼に沈んでしまう。
 この映画はミイラの死霊と現在の被害者の死霊、考古学者、小説家などが絡み合って不思議な世界を作り上げている。人は自分を取り囲んでいる闇の世界に種々な空想を張り巡らしていることが分かる。