「Vフォー・ヴェンデッタ」

 近未来イギリスはサトラー議長(ジョン・ハート)ひきいるノースファイアー党によって独裁されている。英国放送の女性労働者イヴィー(ナタリーポートマン)は外出禁止の禁を破って悪漢に襲われる。そのときVと名乗る仮面の男(ヒューゴ・ウィーヴィング)に救われる。Vは華と教養を兼ね備えた紳士であり、恐怖政治の犠牲者を救うことに余念がないが、一方怨念にかられた復讐鬼でもあった。
 1605年11月5日はガイ・フォークス・デイであり、ジェームス一世を君主とした圧政に反発し政府の転覆を狙って議事堂の地下にもぐって議事堂を火薬で爆破させようとしたがフォークスは捕まって絞首刑、火あぶり、四つ裂きの刑に処されたのであった。
 V自身も政府の陰謀の犠牲者であった。政府は反抗者や弱者をつかって生物化学実験をしていて、Vはその収容所のV号室の囚人であったが、Vだけがその実験が成功した結果であり、強靱な肉体をもつようになっていた。人体実験に怒ったVは収容所を破壊しようとしたとき顔面を含む全身に大火傷をする。そのため仮面をつけ復讐にもえたVはその実験に関わった政府と政府役人を殺していく。すなわち当時司祭であったリリマン司教、植物学者であったデリア監察医、現在報道キャスターのプロセロなどを殺し、最後に11月5日国会議事堂とサトラー議長を殺そうとする。サトラー議長はクリーディーやフィンチ警視など公安・国家権力を使ってVと闘う。一方イヴィーはVに惹かれ知らず知らずVに協力するようになり、フィンチ警視もVを追跡するうち国家の巨悪が見えてきて追跡の気持ちが弱まる。最後はクリーディーがサトラーを裏切り、国民がVによって配られたVと同じ仮面をかぶり独裁国家と闘おうとしてたちあがり、Vの計画通り国会議事堂も爆弾で爆破される。
 独裁国家も必ずや盛者必衰の理でほろびるが、独裁国家を滅ぼすのに常に人は英雄を必要としている。正しいことをしたという思いは英雄をつくり、英雄と同一視することによって、国家破壊行為・革命行為に自己肯定と自信をもてるのである。というのは完全に正しい国家破壊行為などはありえないからである。