サスペリア

 1977年、トップダンサーになる夢をみて、ベルリンにやって来たスージー・バニヨン(ダコタ・ジョンソン)は世界的活動を続ける舞踏団『マルコス・ダンス・カンパニー』のオーディションを受け優秀な成績で合格する。スージーはアメリカの非暴力と絶対平和主義を唱えるメノナイト派プロテスタントの出身である。舞踏団を率いる振付師のマダム・ブラン(ティルダ・スウィントン)に気に入られたスージーは、パトリシア(クロエ・グレース・モレッツ)が次の『民族』という作品の主役に抜擢されていたのに突然いなくなってしまったため、主役ができると出張し、マダム・ブランの前で踊りを披露し主役を認めさせる。しかしそのとき同時にパトリシアは舞踏団の隠れた一室で、魔女の力によってスージーの踊りに合わせて踊らされていて体をぐねぐねにされていた。
 一方分断された西ベルリンではドイツ赤軍によるルフトハンザハイジャック事件などが起こっていた。そのような世相の中で分析派の精神科医をしていたクレンペラー博士(ルッツ・エバースドルフ)は、ときどき東ベルリンにある妻アンケと暮らしていた家を見に行っていた。妻とは第2次世界大戦中に別れ別れになっていた。
 スージーはサラ(ミア・ゴス)と仲良くなり、舞踏団の様子が分かるようになったが、舞踏団の雰囲気の不気味さ、カーテンの向こうから聞こえてくる不気味なうめき声など二人は怯えてしまった。サラはあのうめき声は舞踏団理事長のものではないかと疑い、ある夜こっそり舞踏団を調べ秘密の部屋を探り当ててパトリシアや何人かの変わってしまった姿をみて驚くが、結局魔女につかまって殺されてしまう。舞踏団は魔女の巣窟だった。スージーはサラの知人であった精神科医クレンペラーに相談にのってもらおうとするが、クレンペラーは疲れのせいの幻覚妄想だと判断する。
 いよいよ『民族』というタイトルの舞踏を公演するときに、魔女につくしていた舞踏団は、衰えた魔女にスージーの若さを取り込む機会だと考え、さらにクレンペラーをその出来事の証人にしようとして公演会にも呼んでいた。一方スージーは魔女の部屋を探し当てたが、最後は追い詰められ、逃げだし民族の踊りの輪にもどるが、結局そこは阿鼻叫喚地獄になり、すべてが破壊されてしまう。へとへとに疲れて部屋に戻ってベッドに横たわったクレンペラーのそばに魔女が乗り移ったスージーがやってきて、クレンペラーの妻アンケは戦争中にナチスの犠牲になったことを伝える。それを言ったあと、スージーすなわち魔女はその場から消える。