散り椿

 元扇野藩藩士瓜生新兵衛(岡田准一)は8年前藩内の不正を訴えたが聞き入れられず、妻篠(麻生久美子)を伴って京都で暮らしていたが、死期を悟った妻は新兵衛の剣友だった榊原采女(西島秀俊)を助けに藩に戻ってほしいと言い残して息を引き取る。扇野藩に戻った新兵衛は采女の父平蔵殺しの疑いを懸けられていて歓迎はされていなかった。新兵衛が藩を出た理由は平蔵と御用商人田中惣兵衛(石橋蓮司)の不正を訴えたからである。篠の実家には妹の里美(黒木華)と弟の藤吾(池松壮亮)がいた。藤吾は家に不幸を呼び込んだ新兵衛を快くは思っていなかった。新兵衛は平蔵殺しの真犯人をさぐるため自分たち四天王が通っていた道場を訪ね恩師の息子で現道場主の平山十五郎(柳楽優弥)を訪ね平蔵は四天王しか使えない蜻蛉斬りで亡くなったことが分かる。
 四天王の一人藤吾の兄の坂下源之進(駿河太郎)が平蔵の不正に絡んで8年前切腹したため新兵衛を藤吾は快く思えなかった。藩内では実権を握る城代家老石田玄蕃(奥田瑛二)と藩主千賀谷政家(渡辺大)の信任篤い側用人榊原采女との対立が深まっていた。玄蕃が平蔵と田中屋との不正事件の黒幕でありその証拠の起請文を奪取しようとしていた。身の危険を感じた田中屋はその証文を新兵衛に託す。証文が玄蕃の一味に奪われるが幸いそれは偽物で、新兵衛は本当の証文を采女に託す。新兵衛は結局その人柄に魅せられた藤吾と里美のいる坂下家で暮らすことになる。翌春政家が帰国し政家の護衛であった四天王の一人篠原三右衛門(緒方直人)は玄蕃の企みにより主君を襲った銃弾を主君の身代わりに受ける。三右衛門は死の間際平蔵を切ったのは私だと言って落命す。逆に玄蕃は殿の警護不行き届きの罪で采女に切腹をせまる。進退窮まった采女の前に新兵衛が現れ、篠と采女が相思相愛だったことを知っていてその気持ちに決着をつけるため一騎打ちを申し込む。二人は篠が愛した散り椿のもとで対決する。一方玄蕃は采女を上意討ちをするため手勢を集めていた。結局采女と新兵衛は剣を置き実は篠は本当は新兵衛に尽くすという言葉を采女に残していたことを知る。新兵衛はやっと気持ちの整理がついたとき、采女は追ってきた刺客の弓に射られて死んでしまう。新兵衛は怒りで刺客を皆倒してしまう。その後藤吾の活躍で玄蕃一味の悪だくみを知った藩主が新兵衛を認め、藤吾たちに改革を任そうとする。
 藩の行く末、四天王と呼ばれた仲間意識、恋愛、武士道などたくさんのテーマもある映像の美しい映画だった。