羊の木

 さびれた田舎町魚深市に政府の方針で犯罪者(殺人)が罪をつぐなって退所してきた人を受け入れる秘密政策が実行されようとしていた。
 魚深市職員の月末一(錦戸亮)は最初はそれを知らされずに元受刑者を受け入れる準備や手助けをするよう命じられる。後でわかるのだが傷害致死の宮腰一郎(松田龍平)、傷害致死の杉山勝志(北村一輝)、殺人の大田里江子(優香)、殺人の大野克美(田中泯)、殺人の栗本清美(市川実加子)、殺人の福元宏喜(水澤紳吾)たちであった。かれらは基本的には模範囚で、刑務所で生活するよりは税金がかからなくてすみ、魚深市にとっても過疎対策になるというある意味重要な国家施策であった。しかしそれぞれ人物には癖があり、担当の月末は戸惑う。
 宮腰は真面目だがコミュニケーションが難しく、一人黙々仕事をこなすタイプであり、配達の仕事をするうち月末が久しぶりにあった初恋の相手石田文(木村文乃)と中小企業を継いだ同級生須藤と3人で音楽をやりだすが、偶然それに興味をもった宮腰も音楽活動に参加し始める。一方杉山は再び儲け話をみつけ、こわもての大野や宮腰に手伝わせ再び犯罪に手を染めようとしていた。大田は夫を性行為中に首をしめて殺したという過去があり月末の父亮介(北見敏之)を好きになり生活を共にしようとする。月末一は相手の過去を聞いて最初は反対するが、結局二人の問題ということで落ち着く。暴力団員だった大野克美は足を洗うと決めていたが、クリーニング店での仕事は武骨で鈍いが真面目であった。栗本は夫に暴力を受け続け思い余って夫を殺してしまったが、真面目で几帳面で掃除婦の仕事をのろいながらもこなし続けている。福元は散髪屋に勤めたが、のろろの祭りの日にお酒を店主の雨森に勧められ、お酒を飲むと人が変わる異常酩酊をきたしやっとのことで宮腰に取り押さえられる。
 のろろでの出来事が新聞に載り、そこに映っていた宮腰を探し求めていた目黒厚(深水三章)がやってきて宮腰を探り当て、出会いがしらに宮腰を殺そうとした。実は目黒の息子は宮腰に殺されていた。しかし逆に宮腰は目黒を返り討ちにしていた。それを種に宮腰は杉山に脅され犯罪の手助けを無理強いされるが、結局車で杉山をひき殺してしまう。宮腰は石田に淡い恋心をもち石田もそれを快く思っていたが、嫉妬した月末が石田に宮腰が殺人者だと伝える。死刑を覚悟していた宮腰は石田との淡い恋心を諦めるため月末を海岸の崖に誘い、自分は死刑だが、月末と一緒に海岸のがけから飛び込んでどちらが生き残るかみたいといって月末を道連れにしようとした。結局は月末は助かるのだがのろろという海からやってくる魚の怪物を鎮める不気味な祭りを背景にした犯罪者、犯罪心理を考えさせられる映画だった。