嘘八百

 千利休が生まれた堺市にやってきた古美術商小池則夫(中井貴一)はある旧家の蔵に眠っていた千利休ゆかりの茶碗を発見。実は利休が切腹前に通仙院に贈ると書いてあった書付と箱が本物であったため楽家の茶碗に似せてこしらえた楽茶碗を本物と思ってしまった。その旧家の旦那の役をしていたのが作陶家の野田佐輔(佐々木蔵之介)であり、実はその家の留守番をしていただけだが、骨董商をひっかけるため自分がつくった偽茶碗を売るためにまるで骨董にはド素人のようにふるまった。
 小池は100万円を出して蔵に眠っていた骨董をすべて買うと言いながら実はその楽茶碗だけがねらいであった。一方野田は偽物の器だけを残して書付と箱はすり替えていた。あとで気が付いた小池は野田の行きつけの飲み屋を探し出し、いろいろ文句を言ったがその店には偽書付の名人、偽箱作りの名人など偽物のたまり場であった。小池は空いた口が塞がらずそこは同じ穴のムジナ結局野田の家に娘と押しかけ、野田の息子、妻と一緒に食事と酒をいただくことになる。
 野田は大御所鑑定家棚橋清一郎(近藤正臣)に目を付けられ、陶器の賞をもらった。実は棚橋は野田の作品をたくさん作らせ、樋渡開花堂の店主樋渡忠康(芦屋小雁)と結託して有名作家の偽物として売っていたのである。野田はそのことを知って陶器づくりをしなくなっていた。それを聞いた小池は利休が通仙院に譲った本物の陶器に優るとも劣らない陶器を作り棚橋の鼻をあかそうと提案した。そこで利休と同年代の津田宗及の息子江月宗玩が利休を白鴎(カモメ)と結び付けた故事を意識しながら野田は海を思わせる緑の楽茶碗を作ったのである。最後には棚橋は騙されてその茶碗に1億の値段をつけ買ってしまう。
 小池も野田も仲間たちも大成功に喜び、さらに小池の娘と野田の息子が結婚することになるが、小池は結婚に反対していたので、小池の策略によって、結婚式で野田の息子に元彼女がいてという設定で結婚式をぶち壊す。しかし話はそれで終わらず、そういうこともすべてわかっていた小池の娘も野田の息子も結託して陶器の偽物で得たお金を持ってとんずらするのであった。