ラストレシピ

 現在は2002年。依頼人の人生最後に食べたい料理を出して高額の収入を得る料理人佐々木充(二宮和也)は絶対味覚・麒麟の舌(すべての味を記憶し再現できる)の持ち主である。幼小児期に両親を亡くした充は同じ境遇の柳沢健(綾野剛)とともに施設で育つ。自らの才能を頼りにレストランを起業したが、すべてに凝るあまり経営に失敗し今や料理の情熱も失いつつあった。そんな時巨額の依頼が充に舞い込む。依頼人は楊晴明(笈田ヨシ)で彼は世界のVIPが彼の料理を食べにくるという中国料理界の重鎮である。依頼はかって満州国で日本人料理人・山形直太郎(西島秀俊)が考案したという「大日本帝国食菜全席」レシピの再現であった。楊はかって山形の調理助手として働いていたが、太平洋戦争開戦とともに消息をたった山形とともにレシピも散逸したという。料理は発表されないまま、なぜ歴史の闇に消えたのか?
 充は宮内庁の情報をたよりに山形の助手を務めていた鎌田正太郎(伊川東吾)を訪ねる。鎌田はそれは呪われたレシピだという。1933年天皇の料理番・山形直太郎は国命を受け日本料理「大日本帝国食菜全席」のメニュー開発のため、妻千鶴(宮崎あおい)とともに満州国に移住する。現地での助手は満州人の楊晴明(兼松若人)、鎌田正太郎(西畑大吾)とあわせてたった4人のチームだが山形には麒麟の舌があった。世界中の食材が集まる満州で斬新なメニューを次々生み出す。妻千鶴はレシピ開発中の無理もあったのか、一人娘幸を生んで亡くなる。山形は妻の死に耐え、大日本帝国食彩全席を完成する。その時山形は大日本帝国食菜全席にまつわる陸軍の陰謀に気づき、それに協力せずレシピをハルビンにあったレストランのロシア人オーナーに預けて、後に陸軍に殺されたことが分かる。陸軍の鈴木料理長(竹嶋康成)は天涯孤独となった幸を見守り自分の娘のように育てるが、幸が料理店を開いた途端、火事になり息子を残して死んでしまう。その息子が孤児院の園長(大地康雄)に育てられた充だった。園長はレシピを預かっていたが充に渡せずに死んでしまっていた。
 最後に判明するのだが、もともと充を心配していた柳沢が充を立ち直らせるために充の祖父山形を知っていた人に頼んで充の生い立ちを充自身にたどらせようたしたのであった。たしかに自分で気づいた事実は当人にとって大きな出来事になるだろう。