怒り

 東京八王子で夫婦が殺される事件がおこり、その犯人が指名手配される。夫婦が死んだ現場には怒りと血で書かれた文字が残っていた。事件から1年たち千葉、東京、沖縄で怪しい人物が現れ、それぞれの物語が始まる。
 千葉のある家では3か月前家出した娘愛子(宮崎あおい)が東京で見つかり、父洋平(渡辺謙)が迎えにいくと死んだように個室で眠っていた。家に帰ってきた愛子は村の誰からも遊び女・商売女と思われていたが、愛子が帰る2か月前から漁協で働いている田代(松山ケンイチ)と知り合いになり、田代がどこの馬の骨かもわからないまま二入は恋人同士になっていく。洋平もまともな村人には愛子は相手にしてもらえないと思っていたので徐々に田代を認めるようになり二人の同棲も認めた。
 東京では大手通信会社に勤める優馬(妻夫木聡)はホモセクシュアルな性癖があり、夜はホストクラブで遊び歩いていた。そのクラブに来た若者直人(綾野剛)と出会い、二人は愛し合うようになる。一方優馬には末期ガンの母親がおり、母親にも直人を友人の一人として紹介する。その母親の死も直人は分かち合ってくれなくてはならない存在になっていく。ある日優馬は町で偶然直人が若い女性と喫茶店で楽しく話しているのをみて相当な嫉妬を感じる。
 沖縄では高校生の泉(広瀬すず)が引っ越してきたばかりで、同級生の辰也(佐久本宝)に無人島を案内してもらう。その島にはバックパッカーの田中(森山未来)が廃屋で一時期宿泊していた。泉は田中に興味を持ち時々島を訪れる。ある日泉と辰也は那覇に遊びに行き、田中と出会い辰也と田中は酒を飲み、辰也がうろうろするのを探しているうちに泉はアメリカ兵に襲われる。辰也はそれを見ていたが何もできなかった。実は田中も見ていたが何もできなかった。
 千葉— 殺人犯の指名手配がなされ写真が公開されたとき洋平と愛子は田代が殺人犯ではないかと疑い、警察に通報する。しかし結局は田代は犯人ではなく、去って行った田代に謝りに、迎えに行く。
 東京— 一方優馬は直人が怪しいと思い、かつ若い女性にも興味があると思ってしまって、直人に別れを告げる。その後その直人と付き合っていた女性と会って、直人とは施設で兄妹のような存在であり、心臓がもともと悪かった為直人は死んだと聞かされ相当なショックを受ける。
 沖縄— 辰也は精神的に参り、泉が犯されたにもかかわらず田中が平然となかったことにしようと言ったことにわけがわからなくなって無人島で田中を殺してしまう。その後田中が廃屋の壁に怒りと書いてあったので、東八王子での犯人だと分かった。
 八王子の殺人犯とそれぞれの地域での得体の知れない人物との関連が想像をかき立てる。