Mr. Holmes

 日本の旅から帰った93歳のホームズ(イアン・マッケラン)は庭で飼育しているミツバチを見に行く。人里離れた所にはすんでいたが、ホームズの心は穏やかではなかった。自分が引退せざるをえなかった事件を解決できなかったのが気になり続けている。今から30年前ワトソンが結婚し、ホームズから去っていく頃に依頼された事件であった。その先を書いて整理しようとしていたが、ホームズの家の家政婦マンロー夫人(ローラ・リニー)の息子ロジャー(マイロ・パーカー)が原稿を勝手に読んでいて色々推理するのであった。ロジャーはミツバチの世話も一生懸命してくれていた。さてその事件はトーマス・ケルモット(パトリック・ケネディ)からの依頼であった。彼の妻アン(ハティ・モラハン)が2度の流産のせいでうつ状態に陥り、気分転換にアルモニカという楽器を習いだしてから妻の人柄がすっかり変ったという。楽器の教師マダム・シルラー(フランシス・デ・ラ・トゥーア)という教師が危険人物だといって調べるようトーマスが頼んできた。だがホームズはこの事件を解決出来なかった。年取ったホームズには思い出せる力も少なくなっていた。
 ロジャーの助けもあってホームズは少しずつ思い出す。アンがカフェで夫のサインを偽造し、小切手で貯金をおろし、薬局で毒性の強い薬を購入した。また夫の遺産相続人が妻のアンであることを確認する。庭園のベンチで休むアンに見知らぬ顔で近付いたホームズは「苦しみを行動に変えてはいけない」と諭す。しかしアンはホームズがケルモットに渡した名刺をみせて「隠し芸は他でして」と言い放つ。彼がホームズだと知っていたのである。その後アンは自殺する。ホームズがそれを解明できなかったため探偵業を引退したのであった。その頃日本で世話になった梅崎(真田広之)から手紙が届き私の父マスオ・ウメザキに心当たりはないか?と聞く。父を思い出さないホームズに梅崎は傷ついたが、父マスオが英国政府に仕事を頼まれた時、家庭より仕事が大事だとホームズは助言し、梅崎とその母を捨てたいう出来事があった。ホームズもワトソンと別れ、アンが子供を二人流産し、梅崎が父と別れたなどの出来事がこの映画は別離をテーマにしていることをわからせる。事件を解明しようとしていたホームズがアンに死なれ失意のドン底にいたときワトソンがやってきてホームズの心を救う。ワトソンがそのとき隠したアンの手袋をロジャーが見つけ、重大なアンの言葉に思い至るのであった。夫が自分の事を理解できず楽器に没頭しておかしくなっているなどと思って探偵を雇うなど本当に私をわかってくれなかったと言って子供と一緒の墓に入ることでこの寂しさが和らぐと考えて自殺したのである。
 真相に辿りつきつつあったホームズに突然の事件がおこる。ロジャーがミツバチの巣の近くで瀕死の重症になっていた。マンロー夫人は怒り狂ってミツバチの巣を焼き殺そうとしたが、ホームズは真犯人を発見する。ミツバチだったら針を残すがロジャーが刺された皮膚には針がなかった。逆にロジャーはスズメバチからミツバチを守ろうとしてスズメバチに刺されたと推理して、スズメバチの巣をマンロー夫人とみつけてスズメバチの巣を焼きつくした。ロジャーは一命をとりとめ、ホームズは自分の財産をロジャー親子にゆずると言ってその後もロジャー親子と暮らすのであった。
 人との別れ、その他の別離をひとはどう処理していくのだろうか?