ジャッジュ

 大都市シカゴで敏腕弁護士として金持ちの依頼人を顧客にしているハンク・パーマー(ロバート・ダウニーJR)は母親が死んだと連絡がはいる。父親ジョセフ・パーマー(ロバート・ジュバル)とは絶縁しており、葬式のためインディアナ州にある家に帰っても父親とはそっけない挨拶をするだけだった。父親は町の名士で判事をしていた。兄は自動車修理店を営んでおり、弟は知的障害がありムービーカメラを手放せない状態であった。
 翌朝ダイナーに行き、そこでかっての恋人サマンサ・パウエル(ベラ・ファーミガ)と再開する。彼女には未婚で一人娘がいた。ハンクは今、実家の家族には知られたくない、妻と離婚問題が持ち上がっており、娘の親権を妻と争っていた。そういう背景もあってかサマンサに再び関心を寄せる。その夜父親は一人でコンビニエンス・ストアに行き、兄弟たちは飲みに行った。帰宅したハンクたちは父親の車の前部が破損しているのに気付く。父親は全く覚えていなかった。父親がぶつけただろうと言ったハンクに父親のジョセフは怒って母親から聞いていたハンクの離婚問題を兄弟たちにばらす。怒ったハンクは二度と戻らないと言って家を出ていく。
 ハンクが乗った飛行機のなかで兄から電話がかかり、車にはねられた遺体が見つかったこと、はねられたのが父親と遺恨のあるマーク・ブラックウェルだったこと、父親の車からブラックウェルの血痕が見つかったこと、父親ジョセフがひき逃げの容疑者となったと聞かされハンクは実家に戻らざるを得なくなった。ブラックウェルは若い時ガールフレンド宅に行って銃をぶっ放し、裁判でジョセフは軽い判決にしたのにもかかわらず、短期間の服役後間もなくそのガールフレンドを殺し、20年の服役をして出所したところであった。
 ジョセフはハンクに弁護を頼むつもりはなくその土地の弁護士に弁護を依頼する。ジョセフは全く覚えていないためハンクは弁護士にアドバイスしようとしたが、ジョセフのハンクへの拒否、弁護士の経験不足、優秀な検事のドワイト・ディッカム(ビリー・ボブ・ソーントン)のするどいやり取りのため予審から裁判にもつれ込む。
 ハンクはどうにか父親から弁護の同意を取り付け、なぜ遠回りになる犯行現場に行ったのか尋ねたがジョセフには記憶がなかった。その後ジョセフは末期大腸ガンに罹っており化学療法の影響で記憶障害、幻覚が生じるなどが分かり、ハンクは公表することで裁判が優位になると判断したが、ジョセフは自分が病気なら、最近自分が下した審判が疑われると言って公表に反対する。しかし後にジョセフの車がガソリンスタンドのカメラに写っており、ジョセフが道路の冠水にあって引き返すときの時間よりはるかに速く引き返していることがわかり陪審員の印象が悪くなる。ハンクはそれでも、ジョセフが最後にコンビニでブラックウェルに会った時お前の妻の墓に小便をかけてやるとか挑発されたことを引きだした。しかしジョセフはひき殺したことは覚えていないと答えたが、結局自分で覚えていないが多分ブラックウェルをひき殺したと答える。
 ブラックウェルの罵りにより、せっかく陪審員の同情を買えると思ったハンクだが、父親が自分が殺したとか言いだしたため、最後には父親ジョセフの意思を無視して父親の病気や薬物の副作用の話を持ち出さざるを得なくなった。判決は実刑だったが予想より軽かった。なぜブラックウェルにここまで怒ったかは、実はブラックウェルの犯行が次男ハンクの非行と結び付き刑を軽くしてしまったこと、そしてその後のブラックウェルの殺人を息子ハンクを見る目を変えさせたことをジョセフは語る。また有望な野球選手であった兄貴にけがをさせた負い目がハンクをひねくれさせたことなどもわかる。最後に保釈された父ジョセフと息子ハンクは気分転換のためボートに乗って釣りをしているときに、ジョセフはなくなる。死ぬ間際親子が和解し、故郷を許した瞬間であった。