「二人日和」

 京都で神社関係の衣装をつくっている神祇装束司黒由 玄(栗塚 旭)の妻知恵はALS(筋萎縮性側索硬化症)と言う難病にかかる。玄は毎日近くの梨木神社の水を汲んで来て、それで湯を沸かし夫婦でコーヒーを飲むのを楽しみにしているが、ある日水を汲みに行く途中で1人の大学生が子供達に手品を教えるのをみて、自分の妻知恵がだんだんと手も使えなくなっていくのを少しでも防ぐためにその大学生伊藤俊介(賀集利樹)に声をかけ、妻に手品を教えて貰いたいと頼む。京の町屋であり、自宅兼仕事場である家での生活に支障が出始め、知恵は手伝ってもらいたいという合図もひもを使ってする工夫などをした。その家に俊介がやってきて知恵はしばしの楽しい時間を過ごせるようになる。俊介には恋人がおり、遺伝子の研究をしていて留学するのに彼女と離れなければならないなどの悩みを抱えていた。一方、玄と知恵は若い頃駆け落ちまでした仲であり、二人に子供がないこともあって、玄は仕事と看病・介護を黙々続ける。その姿は俊介に感銘を与える。そんなとき知恵が呼吸困難に陥り、入院する事になった。日本を立つ前の俊介のマジックショウを玄と小康状態の知恵が見た後俊介らと一緒に過ごし、二人は楽しいひと時を過ごす。最初は見舞客にも会っていたが徐々に会うことが苦痛になってきた知恵のために玄は仕事を弟子に譲り、知恵だけのために生きる決心をする。店をたたむ時にでてきた知恵の日記を読みますます二人は離れられないと思う。こうして知恵が死んだ後、玄はしばらく知恵の幻覚を感じるのである。
 四季に彩られた古い町京都、長年暮らしてきた夫婦の絆、妻の難病、職人の仕事と看病・介護、若者の恋愛と仕事など人生を深く感じさせてくれる映画である。愛する人などの非常に大切な対象の喪失には耐え難い痛み、苦しみが伴ない、その苦しさの処理過程は人に感動を引き起こす。