「3丁目の夕日」

 昭和33年東京タワーが建設中だった頃、人々は未来に向かってがむしゃらに働いていた。中学卒業後、地方から集団就職で東京にやってくる若者も多かった。星野六子(堀北真希)も期待を膨らませて、夕日町3丁目の鈴木オートに就職したのである。しかし六子は大きな会社だと思っていたのに小さな町工場でがっかりしてしまうが、気を取り直して頑張っていた。鈴木オートの社長則文(堤真一)は短気でそそっかしいが根は善人であり、妻トモエ(薬師丸ひろ子)は優しく、やんちゃな子供一平(小清水一輝)に囲まれて六子は元気に仕事をしていたが、修理の知識は全くなく、最初は全く役立たずであった。履歴書には自動車修理が出来ると書いていたのにあまりの出来なさに堪忍袋の緒が切れて則文は六子とぶつかってしまう。喧嘩の最中六子の履歴書には自転車修理と書いてあったのを読み間違えていたことが分かり、則文は六子に謝ってまた一緒に仕事を始めるのである。
 ところで夕日町3丁目には駄菓子屋の店主で小説家志望の茶川竜之介(吉岡秀隆)がすんでおり、最近開店した一杯飲み屋の若い女将ヒロミ(小雪)の所によく飲みに来ていた。ヒロミの友人の息子淳之介(須賀健太)が誰も引き取り手が無くヒロミのところにやってきたが、ヒロミは一人暮らしの茶川に無理矢理淳之介を押しつけてしまう。最初は邪魔者扱いしていた茶川が生活のため冒険少年ブックに連載している少年冒険団を淳之介が大好きなのを知って二人は仲良く暮らし始める。ヒロミもたまに世話をしに来てくれて茶川はまんざらでもない。3丁目の鈴木オートにテレビがやってきた時など近所中のみんなが集まって力道山を見るほどだった。ところがテレビがやってきたその日にテレビが見えにくくなったため東大卒の茶川は僕が直せるとしゃしゃりでて結局直せず恥をかくことになった。また淳之介の描いた未来の話を少年冒険団にちゃっかり採用したりして淳之介に借りの意識を持ったりもした。
 そのころ淳之介は母親の居所がわかり一平と一緒に淳之介の母親に会いに行くが結局会えずに終わり、家に帰るお金がなくなり途方に暮れるが一平の母トモエが困ったときに利用するようにといっていたセーターのつぎはぎにお金が入っていたのでようやく家に帰れる。一平の家族はそれこそ心配で心配で大変だった。帰ってきたときには一平は家族に受け止められ、意外にも淳之介も茶川に抱きしめられたのである。
 茶川はヒロミと淳之介の3人で暮らしたいと思い、ヒロミにありったけのお金をはたいて買った指輪のケースを見せ、いつか指輪を買うということでヒロミに求婚するが、ヒロミはうれしく思ったが身内の借金のかたに飲み屋を畳んでそこをでなければならなくなったのである。
 ある日茶川の所にお金持ちが淳之介の父親であると名乗ってやってきて、淳之介を引き取りたいと言ってきて茶川と淳之介二人は別れることになる。ヒロミにもさられ、淳之介にも去って行かれた茶川が必死に淳之介の後を追ったところ、結局淳之介も茶川のところに戻ってきたのである。
 昭和30年代の集団就職、東京タワー、テレビ、市電など懐かしい場面が、映画の話としては陳腐にも関わらず、感動を与えているようだ。