「きみに読む物語」

 ある療養施設でたたずまいも美しく暮らす初老の女性(ジーナ・ローランズ)のところにデューク(ジェームズ・ガーナー)が定期的にやってきてある物語を読み続ける。デュークが一生涯誇れることは一人の女性を愛し続けたことである。
 渡り鳥が飛来し、朝霧にかすむ美しい川のあるノース・カロナイナ州シーブルックに1940年10代のアリー・ハミルトン(レイチェル・マクアダムス)が家族とともに一夏を過ごすためにやってきた。彼女は大都市チャールストンの裕福な家庭の娘である。カーニバルの夜、アリーを一目みて惚れてしまった地元の成年ノア(ライアン・ゴズリング)は彼女に「君が望みさえすれば何にでもなる。」などといってやや強引に口説く。アリーもノアに惹かれていく。ある暑い夜郊外の古い家にアリーを連れ出したノアはこの家を白い美しい家に改築するのが僕の夢だと語り、ノアと出会って絵を描くことが自分の夢と自覚したアリーはノアにアトリエを作ってほしいと頼む。2人は将来を誓いあったが、彼女の両親は材木工場で働くノアとの交際を認めず、彼女をチャールストンに連れて帰る。
 夏は終わりアリーは学校に、ノアは第2次世界大戦の兵士として出征し、お互い引き裂かれていく。ノアは365日毎日手紙を書いたがアリーの母親に妨害されアリーに届かなかった。アリーは徐々にノアを忘れ、戦時下ボランティアで看護した兵士ロン(ジェームズ・マーデン)と新たな恋いに落ちる。ロンは富裕な弁護士で両親も大賛成である。一方ノアは失意のなか、あの郊外の家を改築しアトリエまでつくったのである。その家が売りに出され、家の写真と一緒に写っているノアを見たアリーは婚約者ロンにしばらく留守にするといってノアに会いに行くのである。その家とノアを見たアリーはすごく動揺する。
 「アリーはどちらを選んだの?」と無邪気に質問する初老の女性。
 2人は再開し手紙が届かなかったこともわかり、2人は再び結ばれる。アリーの母親も娘にノアからの手紙を返し、母親自身が過去駆け落ちまでしようとした男性の現在の落ちぶれた姿を見せる。母親は経済的な問題を伝えたかったのである。たとえ愛は金には代えられないとわかっていても。
 さてデュークが物語を読み効かせてきた初老の女性が認知症に罹っているアリーであることがわかり、デュークはアリーに2人の愛を思い出させたくて仕方がなかったのである。認知症のアリーは時にデュークを思い出すがすぐに忘れてしまいデュークはいつもがっかりする。デュークはノアとアリーが結婚し愛し合ってきたことを認知症のアリーに思い出させたかったが、心臓病で死期の近いデュークはある晩認知症のアリーと同じベッドで死んでいたのである。2人は永遠の愛を確かめあっているようだった。
 人間にとってとても大事なものが愛であり、精神機能がたとえ落ちていても愛などの奥深いたましいに触れるものがひとを感動させる。