「アレキサンダー」

 アレキサンダーの友人で部下の将軍、後のエジプト王プトレマイオス(アンソニー・ホプキンス)は自分が死ぬ前にアレキサンダー大王を振り返り記録に残す。紀元前356年マケドニア王フィリッポス(ヴァル・ギルマー)とその妻オリンピアス(アンジェリーナ・ジョリー)との間にアレキサンダーは生まれる。マケドニアを建て直し、荒々しく粗野な父フィリッポスと気性が荒く、ディオニュソスを信仰する母オリンピアスは仲が非常に悪く、母はアレキサンダーに「お前はゼウスの子。父はお前に王位を継がせるとは限らない。しかしお前が世界の頂点に立つのだ。」などと語り不安な少年時代を過ごした。アレキサンダーは武芸にも優れ、学問もアリストテレスに習い、ヘファイステイオンとの同性愛的感情やプトレマイオスとの友情を強く築き、孤独と愛を知る。この頃父も乗りこなせなかった荒馬プーケファラスと出会い乗りこなし、みんなに一目を置かれる。ある日フィリッポスはアレキサンダーに宮殿の地下に描かれたギリシャ神話の壁画を見せ、アキレスなどの栄華と挫折を繰り返す悲しい過酷な王・英雄などの運命を語る。その後フィリッポスは新しい妻を迎え、オリンピアスは我が子アレキサンダーの王位継承の危機を感じる。しかし紀元前336年フィリッポスは何者かに暗殺され、アレキサンダーは若干20歳でマケドニア王となる。
 ただちにギリシャやエジプトを征服し、逆らう者には虐殺従うものには慈悲をあたえ、人々からゼウスの子と崇められた。紀元前331年いよいよペルシアの大王ダレイオス王とガウガメラで闘う時が来た。アレキサンダー軍は4万人、一方ペルシア軍は25万人とても勝ち目はなさそうであり、将軍(大王と同格の貴族)のヘファイスティオン、カッサンドロス、パルメニオンたちに制止されたがが、アレキサンダーは果敢に攻め込み、大けがをしながらもダレイオス王の目前まで迫り、恐れをなしたダレイオス王は逃走する。ここに世界最強のペルシア帝国が滅び、アレキサンダーはバビロンの門をくぐった。アレキサンダーは従順なダレイオス王の家族やアジア人にもギリシャ人と同じように接したのでアジア人を蔑視する将軍・部下たちは不満を抱いた。しかしアレキサンダーはヘファイスティオンだけには世界征服の真の目的を伝えるのである。征服した国々・人々を解放し学問を広め精神も解放するということだった。
 アジア侵攻の途中、アレキサンダーはバクトリア王女ロクサネ(ロザリオ・ローソン)を第1夫人にしたことにより、アジア人との子供が王になることは許せないとパルメニオン(ジョン・ギャバナン)たちは抗議した。ある日アレキサンダーはパルメニオンの息子フィタロスに毒殺されそうになったためフィタロスを処刑し、パルメニオンの同志クレイトスにパルメニオンをも暗殺することを命じ、反乱の芽を封じるのである。こうしてインドにまで達したアレキサンダーの飽くことのない征服欲は、今度は将軍や部下達に阻止され、バビロンに戻ることになる。しかし威信に傷のついた大王はインダス南下の途中マッロイ人との戦闘で捨て身で敵の城壁に飛び込み瀕死の重傷を負いながらも立ち直りカリスマ性を取り戻した。バビロンに戻ったアレキサンダーはさらに地中海に進もうとしたが、突然の病に倒れた。
 アレキサンダーの飽くことのない征服欲は父フィッリポスの征服欲、母オリンピアスの我が子アレキサンダーが世界の頂点になることへの期待と邪念、アリストテレスの世界観・人間観の吸収、同格の貴族・将軍たちとのディベイトからの反発としての従順な異国人への寛容・慈悲・愛情、生まれつきの好奇心・闘争心などなど考えあげたらきりのない出来事が影響しているのであろう。この映画はその征服欲の原因・誘因の一部をかいま見させてくれる。