「キング・アーサー」

 この物語はアーサー王伝説の最近の解釈に基づいている。紀元5世紀の始め、ローマ人に支配されていたブリテン島ではケルト民族ブリテン人のウォード族が反乱を繰り返していた。ローマに破れたサルマート族はローマに捕虜的な傭兵を差し出すよう要求され、サルマート族のランスロット(ヨアン・グリフィズ)達はローマのために小さい頃から故郷を離れてローマのために、ローマ人とウォード族の間に生まれたアーサー(クライブ・オーウェン)を隊長としてウォード族と果てしなき戦いをしていた。アーサーはローマ名アルートリウスでありローマ軍の指揮官であった。アーサーはブリテン人の母親を持っていたがウォード族に殺されており、ウォード族を憎んでいた。このとき母親を救おうとして神剣エクスカリバーを手に入れた。
 一方ブリテンはゲルマン民族のサクソン族にも狙われかなりの数のサクソン族軍隊がローマ軍をブリテン島から追い出そうとしていた。もちろんウォード族にとってもサクソンは敵であった。ローマはハドリアヌスの城壁を守ってきたのだが今やブリテンを放棄せざるを得ないと考えていた。しかしサクソンが迫る地域にはローマの高官マリウスが住んでおり救出をせざるを得なかった。そこで傭兵の期限が切れ自由になるはずだったサルマート人のランスロット達に命じてローマ高官マリウス家族を救い出す命令を最後に与えたのである。アーサーはランスロットを含む円卓の騎士達に過酷な命令を下さざるを得なかった。一方ランスロット達はやっと自由の身になれると思っていたにも拘わらず、死の確率の高い命令をキリスト教徒であり高潔な人格のアーサーのために引き受けるのであった。マリウスの館ではマリウスは村人達を奴隷のように扱い、命令やキリスト教に従わないもの達に拷問して殺していた。怒ったアーサーは拷問され死にかかっていたグヴィネヴィア(キーラ・ナイトレイ)と少年を救いだし、続いてサクソンの侵略から逃れようとした。途中マリウスがアーサーに対抗しグヴィネヴィアに殺される。まもなくサクソン族数百名が逃げるアーサー達に追いついてきてアーサーと円卓の騎士達10名足らずで氷上の決戦をして騎士の一人タゴネットが自らを犠牲にして氷をハンマーで割って勝利を収める。こうしてマリウスの息子と妻をハドリアヌスの城壁に連れて来て救出に成功したため、ランスロットを含む円卓の騎士達はローマから自由の身にされる。
 ウォードの指導者マーリンはサクソン族を破るためには名高いアーサー達を味方にして闘おうとしていた。グヴィネヴィアもブリトン人の血が混じっているアーサーに一緒に闘うよう薦め、彼女に惹かれつつあったアーサーは自分一人でもサクソン族と闘う決断をしたのである。アーサーの決めたことに対し円卓の騎士達は無視しようとしたが、結局はアーサーの人柄に付いて行かずを得ずウォード族と組んでサクソン族と戦い勝利を収める。こうしてアーサーはブリテンの王となった。
 英雄は常に不幸な生い立ちを持っており、それにも拘わらず天性の能力で敵や困難にうち勝つ。最後は不幸な結末になることも多い。人は人のために頑張って苦労して成果を残してくれたにも拘わらずその成果を本人が享受出来ない時に英雄と崇める。ひとは常に無償の愛や犠牲的精神を求めているということであり、現実にはなかなか見いだせない人物を求めている。